電磁波障害に備える
1859年の「キャリントン・イベント」と同様の、太陽フレアによる強力な磁気嵐、またはEMP兵器等により、地上の電子機器のほとんどが、停止や障害ではなく「破壊」されてしまう災害です。なおEMP兵器が多地域で使われたということは、大規模な核戦争があったことを意味します。
とにかく、地上からほぼ全ての電力の供給が無くなり、これまで使ってきたあらゆる電子機器が、致命的に故障すると考えて下さい。
電子機器に生命を維持されている入院患者や、航空機に搭乗している人をはじめとした交通機関の事故により、これによって命を落とす人も一定数いると思われますが、最大の問題は、電気の無い時代に逆戻りしてしまうことです。
大規模な磁気嵐に地球が襲われた場合、文明が100年巻き戻るとも言われていますが、人類は15万年も生きてきており、その中で電気を使っていたのはここ100年程度ですので、多少不便になっても死にはしません、本来であれば。 実際、1770年、1859年の磁気嵐では、人類はまだ電気に頼っておらず、結果として大した被害は受けていませんでしたから、そんなことがあったと知らない人が大部分だと思います。
しかし、もし現代で同じことが起こったら、どう考えても地獄絵図が待っています。
100年前とは違い、現代は生活の根本から電気に依存していますので、電気が無くなると瞬間的に生活がままならなくなります。
何よりも、原子力施設や危険な化学プラント等が多数あり、それらは電気が無い状態で安全に運用できるようには出来ていません。
福島の例でも判るように、原子力発電所や核廃棄物の貯蔵施設等が、冷却に必要な電力の無い状態で正常に機能し続けることはできないのです、しかもコントロール用の電子機器も壊れて作動しませんから、最悪クラスの事故を起こす危険が非常に高いと思います。
世界には、特に恐ろしい量の核物質を保管している施設が何箇所かあります、青森県六ケ所村の核燃料サイクル施設や、フランスのラ・アーグの再処理工場です。
ラ・アーグは80年代に一度事故を起こしかけています、もし本当に最悪の事故が起きたら、致死的な範囲が半径1万キロにもなると言われています、これはユーラシア大陸、北米大陸、アフリカ大陸、南米の半分以上、そして日本をすっぽり含みます。
電力の永久的な喪失は、確実に上記のような原子力事故に直結します、もちろん再処理工場だけでなく、全ての原発で、です。
加えて各種の燃料・化学プラント等でも、通常では考えられない事故が多数起こりそうですし、研究所等の施設から危険な病原体が漏出するような事故も時間の問題で起こるでしょう。
これらが同時多発的に起こるのに並行して、輸送が止まることにより都市部では突如として食糧難が生じ、壮絶なパニックが起こることは間違いありません、都市化が進んでいる場所ほど危険になるでしょう。
避難先は、危険な産業施設の少ない南半球の限られた地域が有力だとは思いますが、そもそも起こってからでは避難はできないでしょう、なにしろ移動手段が無くなっています、飛行機は飛んでいたものは全て墜落していますし、地上にあったものも全て故障しています、船舶も、特に電子化の進んだ長距離を移動できる船は動かないと思います。
多少でも現実味があるのはヨットくらいでしょうが、衛星は全て壊れていますし、電子的な航法は一切使えません、人類は電波を扱えなくなっています、船旅は星と六分儀が便りです。
この災害については、正直なところ、どこでどう頑張っても、まともに生き残れる気がしません、本当にこれ、どうしたらいいんでしょうか。
完全な自然災害なら諦めもつきますが、電気が無いと制御できない危険な施設を作った結果である以上、人災と言っていいものですので、やりきれませんね。